インフルエンサーは確定申告が必要？経費に計上できるものや流れを解説

SNSでの収入が増えてきて「確定申告は必要なのかな？」「経費の計上方法がわからない」とお悩みではありませんか。インフルエンサー活動による収入は、本業・副業に関わらず確定申告が必要となる場合があります。

本記事では、確定申告が必要な条件や経費として認められる項目、具体的な申告手続きの流れまで、インフルエンサーに必要な情報を解説します。早めの準備で、適切な申告を行いましょう。

インフルエンサーに確定申告は必要？

インフルエンサー活動による収入は、本業として行うか副業として行うかによって確定申告が必要となる基準が異なります。それぞれの基準について確認していきましょう。

本業の場合：年間所得48万円以上

インフルエンサー活動を主たる収入源として行う場合、年間所得が48万円以上になると確定申告が必要となります。ここで重要なのは「収入」ではなく「所得」という点です。所得とは収入から必要経費を差し引いた金額を指します。

例えば、年間の収入が100万円あったとしても機材購入費や交通費などの経費が60万円かかっている場合、所得は40万円となりますので、この場合は確定申告は不要です。ただし所得が48万円を下回る場合でも、青色申告※であれば赤字を翌年以降に繰り越すことができるため、申告を行うことをおすすめします（繰り越した赤字は、その後の黒字と相殺することで課税所得を減らすことができるため）。

特に開業初期は機材投資などで赤字になりやすいことから、この制度を活用することで税務上のメリットを得られる可能性があります。

※青色申告：毎日の取引を会計帳簿に記帳し、記帳に基づいて申告をすることで、税務上有利な取扱いが受けられる制度。税制上の優遇措置を活用したい事業者に向いている
※白色申告：申告のための帳簿作成が青色申告よりも簡単な代わりに、税制上のメリットが少ない申告方法。会計知識が少ない人や経理作業が苦手な人に向いている

副業の場合：年間所得20万円以上

会社員などの給与所得者がインフルエンサー活動を副業として行う場合、その副業による年間所得が20万円以上になると確定申告が必要となります。

例えば、SNSでの投稿報酬が月3万円で年間36万円の収入がある場合、経費が年間10万円であれば、所得は26万円となり確定申告が必要です。一方、同じ収入でも経費が17万円以上あれば、所得が20万円を下回るため申告は不要となります。

なお、給与収入が2,000万円を超える場合は、副業による所得が20万円未満でも確定申告が必要となりますので注意しましょう。また、確定申告を行うことで、医療費控除や住宅ローン控除などの各種控除を受けられる可能性があるため、所得が20万円未満でも確定申告を検討する価値はあります。

確定申告の対象となるインフルエンサー収入

確定申告の対象となるインフルエンサー収入は、以下のようなものが挙げられます。

• SNSでの投稿報酬
• 商品PR・レビュー報酬
• アフィリエイト収入
• 物品提供（現物支給）の市場価値
• イベント出演料
• オリジナルグッズの販売収入

特に注意が必要なのは、現物支給の取り扱いです。企業から商品提供を受けた場合、その商品の市場価格相当額が収入として計上されます。例えば10万円相当の化粧品を提供され、それをSNSで紹介する場合、10万円分の収入があったものとして確定申告の対象となります。

インフルエンサーの経費として計上できるもの・できないもの

ここからは、具体的な例を挙げながら、インフルエンサーの経費として計上できるもの・できないものについて詳しく解説します。

経費として計上できるもの

インフルエンサー活動において、事業との関連性が明確な支出は経費として認められます。経費として認められる主な項目は、以下の通りです。

• 撮影機材（カメラ、スマートフォン、照明機器など）
• 編集機材（パソコン、タブレット端末など）
• ソフトウェア使用料（編集ソフト、クラウドストレージなど）
• 通信費（インターネット料金、携帯電話料金）
• 撮影場所までの交通費
• 事務所や撮影スペースの賃料
• 業務用の文具・消耗品
• 名刺やチラシなどの制作費
• 取材・打ち合わせ費用
• 撮影用の衣装・小物（業務専用）
• セミナーや研修の参加費
• 業務関連の書籍・雑誌代

このうち、私生活でも使用する場合は、業務使用割合に応じて経費を按分する必要があります（按分とは事業利用と私的利用の割合に応じて経費を分ける計算方法のこと）。

経費として計上できないもの

私的な性質が強い支出や、事業との関連性が不明確な支出は、経費として認められません。経費として認められない主な項目は、以下の通りです。

• 日常的に着用する衣服
• 普段使いの化粧品
• 私的な食事代
• 家族との旅行費用
• 自宅の家賃や住宅ローン全額
• プライベートでの交際費
• 生活費全般
• 医療費や保険料
• 私的な趣味の費用
• 家族の経費
• 贈答品や記念品
• 私的な会費や年会費

これらの項目は、たとえSNSでの活動に関連していても、原則として経費として認められません。

ただし、明確な仕事依頼に基づく場合は、その部分に限って経費として認められる可能性がありますので、判断に迷う場合は税理士に相談することをおすすめします。

確定申告手続きの流れ

確定申告の期間は、例年2月16日から3月15日まで（土日と重なる場合は繰り下げ）です。ここからは、初めて確定申告を行う方でも安心して手続きができるよう、順を追って解説します。

1. 必要書類を準備する

まず、確定申告に必要な書類として、収入と経費の両方に関する証明書類を用意しましょう。

また、マイナンバーカードやマイナンバー通知カード、身分証明書も必要となります。書類は項目ごとにファイリングし、金額を集計しておくと申告書の作成がスムーズに進みます。

2. 確定申告書を作成する

確定申告書の作成方法は、以下の4つです。

• 国税庁のホームページにある確定申告書等作成コーナーを利用する
• 会計ソフト（freee、マネーフォワードなど）を使用する
• 税務署で配布される確定申告書を手書きで作成する
• 税理士に依頼して作成する

特に初めて確定申告を行う方は、会計ソフトを利用すると良いでしょう。会計ソフトなら領収書をスマートフォンで撮影するだけで自動的に経費として記録されたり、取引先からの入金も自動で収入として計上されたりするため、確定申告の準備が格段に楽になります。

3. 確定申告書を提出する

作成した確定申告書は、以下のいずれかの方法で提出することができます。

• e-Taxによるオンライン提出
• 税務署への持参
• 税務署への郵送

おすすめなのは、e-Taxによる電子提出です。電子提出の場合、24時間いつでも提出可能で、添付書類も電子データで送信できます。

提出後は、申告内容に関する問い合わせに備えて、確定申告書の控えと添付書類の写しを保管しておきましょう。また、納税証明書なども必要に応じて保管しておきます。

e-Taxの利用方法については、国税庁の下記ページをご確認ください。

参考：e-Taxの利用方法｜確定申告特集

インフルエンサーの確定申告に関する注意点

確定申告を適切に行うために、以下3つの注意点を把握しておきましょう。

申告漏れには重いペナルティが課される

確定申告の漏れや誤りには、重いペナルティが設けられています。意図的な申告漏れと判断された場合、追徴課税に加えて重加算税が課されることがありますので、必ず申告を行うようにしましょう。

例えば、100万円の申告漏れがあった場合、本来の税額に加えて15万円から40万円のペナルティが課される可能性があります。また特に悪質な脱税行為とみなされた場合、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金が課される可能性も。

このようなペナルティは、インフルエンサーとしてのイメージダウンにもつながりますので、適切な記録管理と期限内の確定申告を心がけましょう。

領収書やインボイスは適切に保存する

確定申告に関する書類の保管期間は、申告の種類によって異なります。個人事業主の場合、以下の期間の保管が必要です。

なお2024年1月1日以降の電子取引データは電子保存が義務付けられているため、単にスキャンしてデータとして保存するだけでは不十分です。国税庁が認定した電子帳簿保存システムや会計ソフトを利用し、適切に電子保存を行いましょう。

収入計上のタイミングに注意

インフルエンサー活動による収入は、実際に現金を受け取った時点ではなく、役務の提供が完了した時点で計上する必要があります。これは発生主義と呼ばれる会計原則に基づくものです。

収入計上のタイミング例を以下に挙げます。

• SNS投稿の場合：投稿完了時点
• 商品レビューの場合：レビュー記事投稿完了時点
• イベント出演の場合：イベント終了時点
• 継続的な契約の場合：期間按分して計上

問題となりやすいのは、前受金の場合です。契約時に報酬を受け取っても、投稿やプロモーションが完了するまでは収入として計上しないようにしましょう。また複数月契約の場合は、例えば3か月間の契約で30万円の場合、1か月あたり10万円ずつ収入を計上します。

これらの収入計上ルールを守らないと、税務調査の際に指摘を受ける可能性があります。収入の計上漏れを防ぐため、取引内容や役務提供完了日を記録しておき、不明な点がある場合は、税理士に相談するようにしましょう。

インフルエンサー活動で得た収入は適切に申告しよう

確定申告は、インフルエンサー活動を継続的に行ううえで避けては通れない手続きです。収入の管理や経費の計上を適切に行い、期限までに申告を行いましょう。

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